障害者雇用の進め方|就労移行支援事業所と連携した採用ルートと実習受け入れを解説

障害者雇用を進めたいが、どこに相談し、どうやって候補者と出会えばよいか分からない——。企業の障害者採用には、ハローワーク・地域障害者職業センター・障害者就業・生活支援センターという公的な支援機関に加え、就労移行支援事業所と連携するルートがあります。本記事では、相談窓口の選び方から実習受け入れ、採用後の定着支援までの実務の流れを、公的情報をもとに整理します。

なお、法定雇用率や納付金といった制度・お金の全体像は障害者雇用納付金制度の完全ガイドで解説しています。本記事は「実際にどう採用するか」の実務ルートに絞ってお伝えします。

障害者採用の主なルート全体像

厚生労働省のパンフレット「障害者雇用のご案内 事業主の方へ」(令和8年4月1日現在版)では、障害者雇用を支える主要な公的支援機関として次の3つが挙げられています。

支援機関設置数企業向けの主な役割
ハローワーク全国544か所求人受理・職業紹介・助成金の案内
地域障害者職業センター全国47か所+5支所職務設計の助言・ジョブコーチ派遣
障害者就業・生活支援センター全国340か所就業面と生活面の一体的支援・雇用管理相談

これに加えて、実務上は「就労移行支援事業所からの実習受け入れ・紹介」というルートが組み合わさります。公的資料上の標準像としては、①ハローワークで求人を出す、②就労移行支援事業所の実習受け入れや紹介を受ける、③地域障害者職業センターのジョブコーチ支援で定着を図る、という3つのルートを組み合わせる形が示されています。

「そもそも自社は何人雇用する必要があるのか」を先に確認したい場合は、障害者雇用のカウント方法の解説記事をご覧ください。また、法定雇用率は段階的な引き上げが進んでおり、対応スケジュールは法定雇用率2.7%への引き上げ解説で詳しくまとめています。

ハローワーク|求人と助成金の入口(全国544か所)

企業が最初に相談する窓口として位置づけられているのがハローワークです。全国544か所に設置されており、障害者専用求人の受理・職業紹介に加えて、事業主に対しては次のような支援を行うとされています。

  • 雇用管理上の配慮についての助言
  • 地域障害者職業センターなど専門機関の紹介
  • 障害者雇用に関する助成金の案内・一部助成金の申請受付

後述するトライアル雇用助成金は「ハローワークまたは民間職業紹介事業者経由での採用」が事業主要件の一つとされているため、助成金の活用を考えるなら、求人の入口をハローワークにしておくことが実務上の合理的な選択になりやすいと言えます。

また、就労移行支援事業所を利用している障害のある求職者の多くは、ハローワークにも求職登録をしています。つまり「ハローワークに求人を出すルート」と「事業所と連携するルート」は別々のものではなく、重なり合っているのが実態です。

出典:厚生労働省「障害者雇用のご案内 事業主の方へ」(令和8年4月1日現在版・PDF)

地域障害者職業センター|職務設計とジョブコーチの専門機関

地域障害者職業センターは、全国47か所+5支所に設置された専門機関で、障害者職業カウンセラーが配置されています。企業向けには次のような支援を行うとされています。

  • 雇い入れ計画・職場配置・職務設計についての助言
  • 職場での配慮や指導方法についての助言
  • ジョブコーチ(職場適応援助者)派遣による定着支援
  • 精神障害による休職者の職場復帰支援(リワーク支援)

「どんな仕事を任せればよいか分からない」「社内の受け入れ体制をどう作ればよいか」という、採用前の設計段階の悩みに応える機関です。障害者を雇用した経験がない企業ほど、求人を出す前にここへ相談する価値が大きいと考えられます。

障害者就業・生活支援センター|就業と生活の一体的支援(全国340か所)

障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ、就ポツなどと呼ばれる地域もあります)は全国340か所に設置され、障害のある方の就業面と生活面を一体的に支援する機関です。

企業側から見たポイントは、雇用管理に関する相談を受け付けており、企業訪問による支援も行っているという点です。採用後に生活リズムの乱れや体調の波が業務に影響するケースでは、職場だけでは対応しきれない生活面の課題が背景にあることも少なくありません。そうした場面で、職場と生活の両方を見てくれるこのセンターとつながっておくことが、長期的な定着の支えになるとされています。

就労移行支援事業所と連携する採用ルート

就労移行支援事業所とは

就労移行支援事業所は、障害のある方が一般企業への就職を目指して訓練を受ける障害福祉サービスです。JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)のハンドブックでは、「企業等への就職への移行に向けて、就労移行支援事業所内での作業や、企業における実習を実施」する機関と説明されています。

企業側から見ると、事業所と連携する利点は次のように整理できます。

  • 訓練を積んだ候補者と出会える:利用者はビジネスマナーや作業訓練を経ており、支援員が特性や配慮事項を把握している
  • 実習で相互のミスマッチを減らせる:雇用契約の前に、実際の職場で業務との相性を確認できる
  • 採用後も支援員のフォローが期待できる:本人をよく知る支援者が企業と本人の間に立ってくれる

求職者側がどのような事業所で訓練しているかを知りたい場合は、当サイトの地域別の就労移行支援事業所の探し方も参考になります。事業所ごとに訓練内容や得意分野が異なるため、自社の業務と親和性の高い訓練を行っている事業所と連携できると、マッチングの精度が上がりやすくなります。

企業から連携を始めるには

就労移行支援事業所との連携には、全国共通の申込窓口があるわけではありません。一例として大阪労働局では、職場実習に協力できる企業向けの相談申込フォームを設け、労働局が企業情報を就労移行支援事業所などの支援機関に提供し、支援機関から企業へ実習を依頼する、という流れを案内しています。ただしこれは一地域の運用例であり、窓口や手順には地域差があります。まずは管轄のハローワークや労働局に「障害者の実習受け入れに協力したい」と相談するのが現実的な入口とされています。

出典:大阪労働局「障害者の職場実習のご案内」

実習受け入れから採用までの一般的な流れ

実習の受け入れから採用までは、一般的に次のような段取りで進むことが多いとされています(地域・事業所により異なります)。

  1. 職場見学:事業所の支援員と利用者が職場を見学し、業務内容や環境を確認
  2. 職場実習(体験実習):実際の業務を体験する期間を設け、業務との相性を確認
  3. トライアル雇用:雇用契約を結んだうえでの試行雇用(助成金の支給期間の目安は後述)
  4. 継続雇用(本採用):双方の合意のもと、期間の定めのない雇用等へ移行

実習受け入れ時の実務ポイント

大阪労働局の案内では、実習を受け入れる企業側の条件として、労災保険・雇用保険・健康保険・厚生年金保険等への加入、危険を伴わない職場環境の確保、実習担当者の配置、労働基準法等の遵守などが挙げられています(地域の実務案内レベルの整理であり、詳細は管轄労働局への確認が推奨されます)。

実習中の賃金については、就労移行支援における企業実習は就労のための「訓練」という位置づけであり、賃金・工賃の支給を伴わない運用が一般的とされています。また実習中の事故に備えた保険は、実習生が在籍する事業所側が加入する傷害保険等でカバーされるケースが一般的とされますが、保険の扱いは事業所や自治体によって異なるため、実習開始前に書面で確認しておくことが望ましいでしょう。

トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)

実習の次の段階で活用できるのが、トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)です。厚生労働省の案内によると、支給額は次のとおりです(2026年7月確認時点)。

  • 精神障害者:月額最大8万円を3か月間、その後月額最大4万円を3か月間(最長6か月間)
  • 精神障害者以外:月額最大4万円(最長3か月間)

このほか、精神障害者・発達障害者を対象に、週20時間以上の勤務を段階的に目指す障害者短時間トライアルコース(月額最大4万円・最長12か月)もあります。いずれもハローワークまたは民間職業紹介事業者の紹介による雇い入れであること等の要件があります。

さらに、継続雇用に移行した後は特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の対象となる場合があります。令和8年度時点で、重度障害者等を短時間労働者以外で雇い入れた中小企業には240万円(3年間・6期に分割支給)等の区分が設けられています。金額・要件は年度により改定されるため、申請前に厚労省ページで最新情報の確認が推奨されます。

出典:厚生労働省「障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース」厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)」

採用後の定着支援|ジョブコーチと事業所のフォロー

障害者雇用は「採用して終わり」ではなく、定着してはじめて戦力化と雇用率達成の両方が実現します。公的な定着支援メニューの中心がジョブコーチ(職場適応援助者)支援です。

ジョブコーチ支援の3類型

  • 配置型:地域障害者職業センターに配置されたジョブコーチが職場に出向いて支援。派遣依頼の窓口は全国の地域障害者職業センター
  • 訪問型:社会福祉法人等に所属するジョブコーチが企業を訪問して支援
  • 企業在籍型:企業自身が養成研修修了者を雇用し、社内で支援

標準的な支援期間は2〜4か月(個別に1〜8か月の範囲で設定可能)とされ、最終的には上司・同僚による日常的なサポート体制(ナチュラルサポート)へ移行することが目的とされています。

企業在籍型については、企業在籍型職場適応援助促進助成金が設けられており、支援対象者1人あたり月額で中小企業8万円・中小企業以外6万円(短時間労働者はそれぞれ4万円・3万円、いずれも6か月上限)が支給されるとされています(2026年7月確認時点の制度内容)。

また、就労移行支援事業所経由で採用した場合は、事業所の支援員による定着フォローや、障害福祉サービスとしての就労定着支援につながるケースもあり、公的機関と福祉サービスの両輪で定着を支える体制を組めます。

出典:厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」JEED「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援」

よくある不安と対処|「何を配慮すればよいか分からない」への答え

合理的配慮は「対話して決める」もの

障害者雇用促進法に基づき、雇用の分野における合理的配慮の提供は、平成28年(2016年)4月から事業主の法的義務とされています。なお「2024年4月に合理的配慮が義務化された」という報道を目にした方も多いと思いますが、これは改正障害者差別解消法によるもので、対象はサービス提供などの分野であり、雇用・就業分野は対象外と明記されています。職場での配慮は、以前から障害者雇用促進法の枠組みで義務づけられてきた、というのが正確な整理です。

合理的配慮は「過重な負担」にならない範囲で提供するものとされており、万全の設備や体制を最初から用意することが求められているわけではありません。何が必要な配慮かは障害特性や本人によって異なるため、本人との対話を通じて決めていくことが出発点になります。

支援機関を「通訳」として使う

配慮の内容を企業だけで判断する必要はありません。就労移行支援事業所の支援員は利用者の特性と有効な配慮を訓練期間中に把握しており、地域障害者職業センターは職務設計や指導方法の助言を専門としています。実習は、こうした第三者を交えて「この配慮で業務が回るか」を雇用契約の前に検証できる機会でもあります。

出典:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」内閣府「改正障害者差別解消法が施行されました」

障害者雇用の進め方に関するFAQ

Q1. まずどこに相談すればよいですか?

A. 最初の窓口は管轄のハローワークが基本とされています。求人の出し方・助成金・専門機関の紹介まで一か所で案内を受けられます。職務設計や受け入れ体制の設計から相談したい場合は地域障害者職業センター、実習受け入れから始めたい場合はハローワークや労働局経由で就労移行支援事業所とつながる方法があります。

Q2. 実習を受け入れたら、その人を採用しなければなりませんか?

A. 就労移行支援の企業実習は雇用契約に基づく就労ではなく「訓練」の位置づけとされており、実習の実施が採用の確約を意味するものではありません。だからこそ、双方がミスマッチのリスクを抑えながら相性を確かめる機会として機能します。実習の条件(期間・保険・担当者)は事前に事業所と書面で確認しておくと安心です。

Q3. 自社が何人雇用すべきかは、どう計算しますか?

A. 常用労働者数に法定雇用率を掛けて算出しますが、週所定労働時間や障害の程度によってカウント方法が異なります。詳しくは障害者雇用のカウント方法の記事で解説しています。また、未達成の場合に生じる納付金の額を把握しておきたい方は、筆者が開発・公開している無料ツール障害者雇用納付金シミュレータで概算を確認できます(あくまで概算・参考値です)。

まとめ|「出会い方」と「定着のさせ方」をセットで設計する

障害者雇用の進め方は、①ハローワークに求人を出す、②就労移行支援事業所と連携して実習から始める、③地域障害者職業センターのジョブコーチ支援で定着を図る——この3つのルートの組み合わせが公的資料上の標準像です。特に雇用経験の少ない企業にとって、実習からスタートできる就労移行支援事業所との連携は、ミスマッチのリスクを抑えつつ受け入れ体制を整えられる現実的な入口と言えます。

制度面の全体像(納付金・調整金の仕組み)は障害者雇用納付金制度の完全ガイドを、雇用率引き上げのスケジュールは法定雇用率2.7%の解説記事をあわせてご覧ください。

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